
(c)電離層シンチレーション
電離層のF層に異常な電離のある(スプレッドF層)ときに生ずる強いフェーディンクで、受信電界強度に短い周期で減衰が生じ、通信品質の劣化又は通信の途絶えを招き、2〜3時間も続くことがある。低い周波数、特に海事衛星通信などのLバンドに影響が大きく、磁気緯度の低い地域と極地域で多発をする。
その他、海事衛星システムでは、回線品質を劣化させる要因の一つとして海面反射波によるフェーディンクを挙げることができる。すなわち図7・11に示すように、船舶地球局が低仰角で衛星の電波を受信する場合、空中線のビーム幅が広いため、衛星から直接波のほかに海面からの反射波も同時に空中線に入ことになる。この反射波は、

電波の入射角に応じて振幅と位相が定まるが、波浪による船舶の動揺や海面レベルの変化により、空中線に入射する反射波の位相と振幅は刻々と変化する。このような二つの信号が合成されるため受信信号レベルの変動、すなわちマルチパスフェーディンクを生ずる。
移動体衛星通信と測位
衛星通信用としての衛星は、現在のところ、そのすべてが静止衛星である。これらの衛星は通信衛星、放送衛星と移動体通信衛星に大別される。この章の初めでも述べたようにTVの中継は衛星通信の大きな一つの分野である。これらの中には、わが国のように比較的小さな受信空中線を使用して、視聴者が直接受信をする放送衛星、最近わが国でも見られるようになったビルの屋上などに中形の空中線を置いた共同受信のTV放送と中継があり、これには通信衛星のチャンネルも使用されている。この他、TV局による放送のための国際と国内中継もある。
通信衛星には国際通信用のインテルサット衛星と各国の国内通信衛星がある。国際通信は公衆電話、FAX、データ通信の他、専用回線もあり、国内通信衛星は、企業などの専用回線が主体である。
移動体通信衛星は、現在のところ運用されているのは、国際組織であるインマルサットの海事衛星システムであるが、インマルサット条約の改正により、利用可能なときは航空衛星通信と陸上移動通信への利用の道が開けている。
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